聖句「イエスが、『名は何というのか』とお尋ねになると、『名はレギオン。大勢だから』と言った。」(5:9)
1.《レギオン》 「レジオンドヌール勲章/名誉軍団国家勲章」も、「レジオネラ菌」の名前の由来「在郷軍人/レジョネーア」も「レギオン」から来ています。ローマ帝国の軍団単位から「大勢」を表わす意味で、当時のユダヤでも使われていたようです。ロラン・バルトは「悪霊は複数である」と定義し、人間関係の中に生成する感情(絶望、嫉妬、拒絶、欲望、自己喪失、高慢、虚栄心、不安)に、私たちが振り回される様を例えていました。
2.《病の分類》 近代以後、「汚れた霊に取り憑かれた人」の症状から「精神病」と分類されて来ました。確かに「病人」と「悪霊憑き」はセットに成っていて、体の病と心の病と考えられます。しかし、皮膚病も「癩病」も衣類や家屋の黴も同じ語で表わす時代です。原因の分からない病気は何もかも「悪霊憑き」としたはずです。北海道の「べてるの家」のメンバーは「自分の病気は自分で命名」しています。その病を背負って生きている者にしか本当のことは分かりません。それどころか、私たちが自分の病に気付かない場合もあります。
3.《家に帰る》 レギオンに取り憑かれた人は墓場にいました。生きながらにして死の世界に置かれていたのです。鎖や足枷で縛っても問題は解決しません。反対に信頼さえも失われてしまいました。直訳は「汚れた霊の中における人間」なのです。大勢の中にいても無感覚で無関心、愛も希望もありません。これは私たち自身の姿です。私たちの解放の根拠は神さまです。神に根拠を置いてこそ、愛は愛となります。イエスの悪霊祓いとは、閉鎖的な自己喪失状態から私たちを解放して、改めて社会と家族に送り返して下さることなのです。
朝日研一朗牧師