2014年04月23日

丈夫な人に医者は要らない

1.緊急入院

去る4月2日、急性虫垂炎(つまり、盲腸炎)のために緊急入院をしました。最初に駈け込んだ厚生中央病院では「手術が2つも入っているから」という理由を付けられて、入院させて貰えず、そこから日赤医療センターへ救急車で搬送されるという、如何にも大袈裟な展開と相成りました。

翌3日に手術。手術を怖がる人は大勢いますが、盲腸炎は簡単な手術でしょうから、怖くは感じませんでした。いや、それよりも何よりも、痛みが耐え難く、何でも良いから早く切って欲しいというのが、正直な感情でした。全身麻酔は初体験でしたが、昔から、歯医者や外科で部分麻酔は何度も受けていて、あの感覚は大好きなのです。ですから、別段、麻酔の不安もありませんでした。手術室に運ばれて、台の上に寝かされて、麻酔を受けて、そのまま意識を失いました。そして、術後に名前を呼ばれて、目覚めた時にも、さほど不快な気分ではありませんでした。

むしろ、術後の夜こそ、再び痛みとの闘いです。点滴に痛み止めも入れて貰っているのですが堪りません。腕には点滴、尿道にはドレイン(管)が入っており、両脚には静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)予防の血流マッサージのバンドが装着してあって、始終、ボッコンボッコンと動いています。風呂屋のマッサージ機は大好きなのですが、こちらは余り楽しくはありません。

翌々日、血流マッサージバンドと尿ドレインを外して貰い、漸く生き返ったような気がしました。トイレに行く時、真っ直ぐ歩いているつもりなのに、実際には、体がフラフラしていたのに驚きました。ドレインのせいで、数日は小便の度に、膀胱に痛みを感じました。

2.院内生活

日赤に搬送されて驚いたのは、その病室が教会のメンバーのHさんが入って居られた部屋だったことです。かつて、お見舞いにお訪ねした部屋に、今度は自分が入院患者の立場で身を置くことになるとは、何か不思議な気持ちでした。

手術を前に、若いナースが下腹部の体毛を剃りに来るとは聞いていました。実際に、その通りだったのですが、残念ながら、痛みで意識が朦朧としていて、恥ずかしいとも嬉しいとも、何の感慨も湧きません。床屋のように、熱いタオルとシャボンとカミソリを期待していたのですが、電気カミソリを使って刈り上げるので、情緒もヘッタクレもありません。こういうのを「散文的」と言うのでしょう。

むしろ、驚いたのは、臍(へそ)のゴマも取ることです。臍の中にオリーブ油を入れて、しばらく漬け込みます。すると、臍のゴマがふやけて取り易くなるそうです。臍の中に指を入れてホジ繰り返され、気持ち悪くて吐きそうでした。

もう一つ、手術して驚いたのは、声が小さくなってしまったことでした。手術後に、妻と子どもたちが見舞いに来てくれたのですが、いつも隣近所にまで響くような大声で怒鳴っている私が、それこそ蚊の鳴くような声で囁いているのを聞き、その姿を見て、哀れに思ったのでしょう、子どもたちはハアハア言って笑い転げていました。

しかも、その事実にすら、自分では全く気付かなくて、妻に指摘されて初めて分かったような次第でした。「病院に入ると、声を奪い取られるのよ」と、妻は魔女のように暗示めいたことを言います。けれども、後から考えると、数日間、点滴だけで、絶食が続いているのですから、当然のことでしょう。

点滴が外れると、男の嗜み(髭剃り)が復活します。普段は毎朝、超特急で行なう髭剃りの儀式ですが、入院中はたっぷり時間をかけて楽しむことが出来ます。ところが、病室の洗面台を占拠して、神妙に髭剃りをしているところ、折悪く、内科部長だか外科部長だかの総回診と重なり、大勢のドクターやインターンに囲まれて、鏡越しに容態を訊かれるというヘンテコな場面が現出してしまいました。

水糊のような重湯が粥に変わり、それに副食が付くようになった時には、美味しくて涙が出ました。やはり、飢えのないところに感謝は生まれません。

3.声の回復

3月31日から始まった、連続テレビ小説『花子とアン』を楽しみにしていたのに、手術の前後、テレビを見ることが出来ませんでした。本格的に鑑賞し始めたのは、やはり退院後でした。

スコット先生が窓辺で歌う「O Waly Waly」は、イングランド南西部サマセット地方に伝わる民謡です。伊原剛志が思わず「美しい歌じゃ」と呟いたように、私たち夫婦も「綺麗な歌」とうっとりしていました。すると、「『讃美歌21』に載っています」と、奏楽者のYさんが教えてくださいました。「讃美歌21」104番「愛する二人は」という結婚式の讃美歌になっていました。勿論、ブライアン・レンによる英語の歌詞(When love is found)は、後から付けられた讃美歌の詞で、スコット先生の歌っていた原詞とは異なります。

因みに、私の持っている英語の讃美歌集「Anglican Hymns Old & New」を調べ直してみたら、アイザック・ウォッツによる詞、フレッド・プラット・グリーンによる詞、ジョン・L・ベルとグレアム・モールによる詞と、3つも入っていました。英語圏で、このメロディーがどんなに愛されているか、よく分かります。

皆さんのお祈りとお励ましに支えられて、4月13日の主日礼拝から復帰して、また、大きな声を出して、讃美歌を歌い、講壇の奉仕に当たることが出来るようになりました。お腹から声が出るようになることこそが、私にとっての「イースター」でありました。

牧師 朝日研一朗

【2014年5月の月報より】

posted by 行人坂教会 at 12:01 | ┣会報巻頭言など