聖句「主は彼を外に連れ出して言われた。『天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。』」(15:5)
1.《夜空の明るさ》 環境省の「星空日本一」に選ばれた地域を調べていて、「夜空の明るさ」とは、即ち「夜空の暗さ」のことであると、改めて気付かされました。大都会では「光害」と大気汚染、高層ビルの多さで星空を見ることが出来ません。私たちは星空の失われた、とても暗い街に暮らしているのです。
2.《星の導く世界》 御降誕の時、東から来た占星術の学者たちを幼子のもとに「ベツレヘムの星」が導いたと書いてあります。星が動いたのではなくて、この地球が動いていたのでしょう。現代なら、そのように合理的に説明できます。しかし、聖書の世界の人たちは、天体を生き物と考えていたのです。「占星術/アストロロギア」とは「星/アストロン」の「言/ロゴス」を読み取る技術です。「天文学/アストロノミア」が「星/アストロン」の「法則/ノモス」を説明するのとは対照的です。天文学が物理を探求するのと違い、占星術は魂を扱うのです。アブラハムは、古代文明と占星術の発祥の地、カルデアのウルの出身です。彼もまた、「星の言」に耳を傾けようとする気持ちは強かったはずです。
3.《星を数える心》 アブラハムとサラの夫婦には子がありませんでした。跡を継ぐ者がいないことは、大変な悲劇なのです。受け継ぐものは、土地財産や血筋だけではありません。文化や言語、家業や技術、伝統や経験、信仰や信条、生き方や志も、人間は継いで行くのです。途絶えれば、もう再生は出来ないのです。今や日本国中に、更地になった家屋敷、荒れ果てた田畑や山林が溢れています。里山は消滅し、多くの集落が限界を迎えています。継ぐ者がいないということは、個人的な問題ではないのです。「私には跡継ぎがいません」と呻くアブラハムを神は外に連れ出して、広大無辺の星空をお見せになります。「これがあなたの子孫だ」と言われるのです。星空に過去ではなく、未来を見るように仰るのです。
朝日研一朗牧師