聖句「また、イザヤはこう言っています。『エッサイの根から芽が現われ、異邦人を治めるために立ち上がる。異邦人は彼に望みをかける。』」(15:12)
1.《サンタ事始》 日本社会に広く深くクリスマスを普及させたのは、宣教師でも牧師でも熱心な信徒でもなく、サンタクロースとクリスマスツリーでしょう。日本初お目見えは、両方とも1874年(明治7年)です。米国長老派教会の宣教師、キャロザース(カロゾルス)から受洗したばかりの、元南町奉行所与力の原胤昭が築地の学校のクリスマス会で、裃姿に大小の刀を差して鬘を被ったサンタを演じているのです。サンタの姿や衣装も国や地域により異なる時代でした。
2.《聖木と聖書》 クリスマスツリーには、聖書に因んだ飾りもあります。でも、所詮はお飾り程度です。ツリーの起源は、8世紀のボニファティウスの逸話にあるとか、定番の樅の木を横から見ると、三角形をしていて「三位一体」等と解釈する人もあります。しかし、如何に後付けをしても、所詮はゲルマン人の冬至祭「ユール」の聖木の焼き直しと思われます。ツリーは聖書とは無関係に思われます。ところが、シャルトル大聖堂の「エッサイの木」のステンドグラスを見た時、これこそ、クリスマスツリーの原点ではないかと思わされたのです。
3.《異邦人の木》 「エッサイの木」の図像は、画面の下で眠っている老エッサイの腹から太い幹が伸び、ダビデ、ソロモンを経て、24人の王たちに枝分かれし、中央の梢にはキリストがあります。13世紀には、頂点のキリストは聖母子像に 変わります。母マリアは「ダビデの血筋」ではありませんから「家系図/ファミリーツリー」の否定です。しかも、エッサイ自身は眠っていますから、人間の業や力によるものではありません。それどころか、エッサイはモアブ人ルツの孫に当たります。異邦人の血筋なのです。イエス・キリストは、単なるユダヤ人のメシアに終わらず、全ての「異邦人の救い主」なのです。
朝日研一朗牧師