2018年04月23日

箱舟の行方【創世記6:9〜22】

聖句「この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。」(6:11,12)

1.《沈みゆく箱舟》 最近では動物園や水族館が「ノアの箱舟」としての使命を主張するようになりました。生物種の精子や卵子、DNAを保存する「冷凍動物園」もあります。現在、1年間に4万種もの生き物が絶滅しています。この40年で「種の絶滅速度」が急速化したのです。環境学者、ノーマン・マイヤーズはこの状況を予見して「沈みゆく箱舟」に私たちは乗っていると言いました。

2.《もののあはれ》 日本的な感受性なのでしょうか、私は「洪水物語」を読むと「平家物語」の「壇ノ浦」(安徳天皇入水)を思い出すのです。滅び行く者たちに思いが向かうのです。SF作家のケン・リュウは、小惑星の衝突で地球が消滅する直前に、宇宙船に乗り組んで「最後の日本人」となった青年を描いています。その彼も宇宙船の船外修理に自らの命を捧げて、彼の死と共に、日本文化も日本語も、日本的感性と悟性も失われます。しかし、彼は宇宙船を未来に送り出したのです。かつて日本人の両親が自分たちは乗船せずに、彼だけを宇宙船に乗せて送り出したように…。箱舟に乗らずに、箱舟を見送った人たち、送り出した人たち、動物や植物がいたのではないでしょうか。

3.《箱舟を去る日》 勧善懲悪のハリウッド映画では、箱舟に乗れなかった人たちは全て「極悪人」のように描かれますが、本当でしょうか。「堕落」と訳されているのは「壊す」、神の秩序の破壊です。「不法」は「暴力」です。破壊と暴力によって犠牲になっている人たち、動植物もいたのです。箱舟の生活も互いに譲り合わなければ生き延びられない窮屈さに、震災後の公民館や体育館が思い出されます。「箱舟」とは「箱/テーバー」です。私たちは限りある命、儚い存在なのです。だから互いを大切にしなければならないのです。「箱」から出る未来に、私たちが主の描く虹を見ることを展望しているでしょうか。

朝日研一朗牧師

posted by 行人坂教会 at 19:55 | 毎週の講壇から