2018年08月14日

旭日亭菜単(続き)その47

  • 「真景累ヶ淵」(三遊亭円朝作、角川ソフィア文庫)
    「真景」は「強迫神経症」の「神経」です。文明開化の明治の世にと言うので、幽霊が出るのは「神経」のせいと嘯きつつ怪談が語られます。坪内逍遥が二葉亭四迷に「言文一致をやるんなら、三遊亭をお読みよ」と勧めたとか。親の因果が子に祟る「因果物」の代表作ですが、怪談の趣きは前半だけ。後半は仇討ち物語に変わってしまいます。けれども、意外に面白かったりします。仏教的因縁の色彩はあるものの、深見新吉とお賤のカップルはボニー&クライドのような凄惨なアウトローぶり、仇討ち物語の敵役、安田一角、山倉富五郎の卑怯者ぶりのキャラも際立っていて、これは立派なピカレスクロマンです。江戸時代の無残絵「英明二十八衆句」を思い出させます。勧善懲悪の説話類型の流れを汲んでいるものの、大長編の物語を動かして行くために、結果的に彼らの極悪非道ぶりが強調されることになったのでしょう。新吉と賤にとって唯一の救済は懺悔の果ての自死しかありません。一角や富五郎、土手の甚蔵などに至っては惨めに殺されるばかりで、凡そ仏の慈悲も及びそうにはありません。この辺りの無慈悲さ(仏の復讐か?)が悪人どもの悪行の凄惨さと通底しているようにも思われます。
  • 「絶対に出る 世界の幽霊屋敷」(ロバート・グレンビル著、片山美佳子訳、日経ナショナル・ジオグラフィック社)
    屋敷のみならず、幽霊の出るという城郭、墓地、ホテル、工場、病院、教会などの美しい写真集です。但し、欧米が圧倒的に多く、アジア、アフリカ、中南米はほんの申し訳程度です。キングの『シャイニング』のモデルになった米国コロラド州のスタンリーホテル、カリフォルニア州のウィンチェスター・ミステリー・ハウス、メキシコの人形島、ルーマニアのブラン城など、説明不要の名所も多々あります。私が個人的に気に入ったのが、米国コネチカット州のイーストン・バプテスト教会です。かつて私が赴任した教会と建物がそっくりで、懐かしかったです。カラー写真の幾つかは露光させたりして、不気味な雰囲気を出そうと演出していますが、やはり、モノクロ写真には、夢幻の世界に連れて行かれそうな、独特の迫力があります。
  • 「ミスト/短編傑作集」(スティーヴン・キング著、矢野浩三郎他訳、文春文庫)
    冒頭の「ほら、虎がいる」に続けて「ジョウント」を入れたことから、日本語版編集者の遊び心が分かります。「ジョウント」とは、アルフレッド・ベスターの古典的SF小説『虎よ、虎よ!』で描かれたテレポーテーション能力のことだからです。その「ジョウント」は、幕切れの数行のためにだけ存在するホラー小説です。そして、有名な「霧」です。怪談の語り手であるキングにとって、オチの付け方が重要です。「ジョウント」がその好例です。フランク・ダラボン監督の映画版のオチを、キング自らが絶賛したという事実からも分かります。しかし、これは映画ではなく小説ですから、どこまでも閉塞感が深まり、結局それは拡がり続けるばかりという、プロセスの恐怖に主軸が置かれています。ところで、人々を狂信へと誘うミセス・カーモディは「ヨハネの黙示録」風の聖句を叫びますが、デヴィッド自身も、嵐の夜に巨大な神が歩く夢を見て不安を感じています。その心象表現にもキリスト教が色濃く出ています。「カトリック教会の助祭のパーティーでポルノ映画を上映していると告白しているような口調」「ニューイングランドの清教主義の狂気の遺物」「キリストにすら、わずか12人しか後に従う者はいなかった!」「昔の信仰復興のための天幕集会の信者」等という言い回しです。弁護士ノートンに率いられる「不信者」、カーモディに操られる「信者」、この両者の間に立って闘うことこそが、恐怖の現実に向き合う唯一の道なのです。
  • 「プリニウス」第7巻(ヤマザキマリ+とり・みき作、新潮社)
    有名な紀元64年の「ローマ大火」です。本書では、皇帝ネロの仕業ではないということに成っています。悪女の汚名を着せられることの多いポッパエアも、必死に真犯人を追究していて、読者の同情を誘います。作者たちとしては、皇帝ネロは「出来の悪いハドリアヌス」(後書き)の悲劇みたいな纏め方をするのでしょうか。今のところ、近衛師団の司令官ティゲリウスとユダヤの豪商レヴィテあたりの陰謀のようですが、果たして作者たちの推理や如何に。そう言えば『サテュリコン』のペトロニウスが出て来ませんね。ともかく、ローマの描写が派手なので、主役のプリニウス一行のピラミッド調査は些か地味な印象になってしまいました。
  • 「神紋総覧」(丹羽基二著、講談社学術文庫)
    家紋は家の紋章、神紋は神社の紋章。即ち神の権威や天皇、幕府の権威などにあやかって神紋を家紋にしたり、人を神として祀り上げる場合には、そのまま家紋を神紋にする神社もあったりします。神紋にも流行があり、異教や異国文化からの影響もあるのだとか。仏具から来た輪宝紋とか、サンスクリットの「mani/摩尼」に由来する宝珠紋とか、そもそも「お稲荷さん」も外来神であった可能性もあります。それにしても魂消たのは、ユダヤ教やキリスト教との関連も示唆されていたことです。例えば「兵庫県赤穂市の大避(おおさけ)神社は矢車紋を用いている。この神社は秦氏の祖神、大避神を祭るが、外来神で、八本矢車紋は…一説にはユダヤの神ダビデのシンボルマークをアレンジしたものともいう(大避神はユダヤ神)」等と書いてあります。ダビデは「ユダヤの神」ではないよと思いつつも、愉快な気分です。そう言えば『変身忍者嵐』の敵は「血車党」と「西洋妖怪軍団」だったしな(笑)。八坂神社でお馴染みの祇園守紋のX印、これも「池田氏、立花氏等はキリスト教に改宗したため、十字にことよせたことは事実である」と書いてありました。私の故郷の養父(やぶ)神社も採り上げられていて、その神紋、四つ木瓜(もっこう)が、地方豪族の日下部氏に由来することも分かりました。高校時代の同級生に日下部クンいたな。私らは、あれの配下だったのね。
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8月第3主日礼拝

       8月19日(日) 午前10時30分〜11時40分
説  教 悪い時代にあっても音楽 定家修身牧師(弓町本郷教会名誉牧師)
聖  書  エフェソの信徒への手紙 5章15〜20節(p.358)
讃 美 歌  27、372、490、197、458、25
交読詩編  詩編62編6〜13節(p.70)

・みんなでお掃除    礼拝後    礼拝堂、階下ホール

・・・当日の音声録音を聴く
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