聖句「主が恵みをお与えになる年/わたしたちの神が報復される日を告知して/嘆いている人々を慰め…」(61:2)
1.《改元の年》 天皇の代替わりに伴い、2019年4月末日をもって元号が変えられます。明治天皇崩御の際に乃木希典夫妻が殉死したのは有名ですが、昭和天皇崩御の際にも全国で約10人が殉死しています。私たちが使っている年号は、私たちの時を支配するのは誰なのかという表明、謂わば信仰告白なのです。従って天皇崩御に際して殉死するのは、ごく真っ当なことなのです。
2.《紀元と暦》 イスラームはマディーナ遷都を紀元とする「ヒジュラ」、ユダヤ教徒は天地創造を紀元とする「ハルアハーイブリ」、仏教徒は「仏滅紀元」という暦を使っています。北朝鮮では全日成の誕生日を紀元とする「主体暦」を使っていて、私たちから見ると如何にも滑稽ですが、日本の皇国史観も神武天皇の即位を紀元とする「皇紀」を使っています。キリスト者は公式には元号を使いません。「西暦」と言われるのは「キリスト暦」です。実際の御降誕とは数年の誤差が生じているようですが、クリスマスを12月24〜25日にお祝いするのと同様に、教会暦として用いる分には、何の問題もありません。
3.《恵みの年》 「ルカによる福音書」4章のイエスさまの「公生涯」の始まりとして「イザヤ書」の預言が引用されています。この「主の恵みの年」という語から「紀元後」を意味する「AD/Anno Domini」が生まれました。「恵み」という語は「七十人訳」において付け加えられました。敵に対する「復讐」を思わす語も「七十人訳」の段階で「悲しむ者たちに主が報いられる」と読み替えられています。キリスト者は旧約聖書を、そのまま鵜呑みにするべきではありません。主の御言葉である聖書は生きていて、イエス・キリストの出現と宣教によって、全ての人への福音へと作り変えられているのです。
朝日研一朗牧師