2020年07月26日

どこへ行くのか

1.ゴートゥ事業

新型コロナウイルス感染拡大が続く中、政府は1兆6千8百億円もの大規模な補正予算を組んで、「Go Toキャンペーン事業」を始めました。

第一弾は「Go To Travel」、大きな打撃を受けた観光業者に対する支援策です。期間中に旅行代理店を通して旅行、宿泊したら、代金の2分の1程度のクーポンが貰えるそうです。第二弾は「Go To Eat」、飲食業者に対する支援策です。期間中にオンライン予約サイトを通して飲食をしたら、ポイントが貰えるそうです。

実は、まだ続きます。第三弾は「Go to Event」、期間中にチケット会社を通してイベントやエンタメ(劇場や娯楽施設)のチケットを購入したら、2割分のクーポンが貰えると言うのです。第四弾は「Go to 商店街」、この辺りに成ると、もうサッパリ分かりませんが、地域の商店街がイベントを開催したり、公告や販売促進活動をしたり、新商品を開発したりするのを支援するようです。

しかしながら、皆さんも御存知の通り、旅行を奨励する第一弾から躓いてしまいました。都道府県知事や地方自治体の首長から一斉に、感染拡大を懸念する声が上がり、東京都民は「Go To Travel」から外されてしまいました。既に旅行を予約していた東京都民のキャンセルが相次ぎ、そのキャンセル料を、政府が補償することになったそうです。このドタバタ振り、まるで下手糞な喜劇のようです。

とは言え、これによって、またもや国民の血税が湯水のように流されて行くのですから、笑って済ませられるものではありません。税金泥棒して特定業者にだけ手渡すと言うので、「強盗キャンペーン」、感染拡大させた上に財政破綻を招くと言うので、「Go To Hell(地獄行き)キャンペーン」と揶揄されるのも当然です。

2.キャンペーン

それにしても、いつから日本政府は「商業キャンペーン」を企画する会社の真似事を始めたのでしょうか。我が国の国土交通省や経済産業省は、広告代理店の「電通」に乗っ取られてしまったのでしょうか。

「キャンペーン/campaign」とは「組織的運動、活動」のことです。「交通安全運動」「販売促進運動」「募金活動」等が「キャンペーン」の代表です。でも、米国で「キャンペーン」と言えば、大統領選や議員選、州知事選などの「選挙活動、選挙戦」です。その意味では、「Go To キャンペーン」も、旅行業者、飲食業者、チケット業者、商店街と順番に特定業種を支援することで(と言っても、単なる税金のバラ撒きですが)、秋に行なわれるとも噂される総選挙のために、支持票獲得を狙った「企画」なのかも知れません。

そもそも「キャンペーン」等というチャラい語が謳い文句として出て来ること自体が、日本国の国家政策に相応しくないと、私は思っているのです。振り返れば、バブル時代は「キャンペーンガール」(略して「キャンギャル」)の全盛期でした。高度経済成長期には「イベントコンパニオン」と称していたものです。

私にとっては「キャンペーン」と言えば、街頭で「キャンギャル」が、ハイレグ水着やレースクイーンのコスプレで「販売促進」のプロモーションをやらされている、そんなイメージなのです。要するに、完全な「色物」なのです。

3.行き先が不明

先日、NHKの「BSシネマ」で『クォ・ヴァディス』(Quo Vadis)を放映していたので、録画して観たのでした。ポーランドの作家、ヘンリック・シェンキェヴィチの原作を、ハリウッドで映画化した懐かしの名画(1951年)です。所謂「聖書もの」「キリスト教もの」の「スペクタクル映画/Epic Film」です。

東方遠征から凱旋したローマ帝国の軍司令官、マルクス・ウィニキウスが、ローマに捕囚されている、小国(スラブ系)の王女、リギア(キリスト教徒の娘)と出会って、恋に落ちるのですが、ネロ帝によるローマの大火とキリスト教徒に対する迫害の中で、信仰に目覚めるという筋書きです。彼らに関わる人物として、使徒ペトロやパウロも登場します。ネロの廷臣として、『サテュリコン』のペトロニウスやセネカも登場します。

さて、タイトルの「クォ・ヴァディス」の由来です。ネロ帝の迫害を逃れたペトロが、ローマを去るべくアッピア街道を歩いていた時、朝の光の中に、キリストが顕われます。思わずペトロは「主よ、何処にか行き給うや?」と問うのです。それが「Quo vadis,Domine?」です。ラテン語の発音は「クォー・ウァーディス・ドミネ」です。すると、キリストが答えて曰く「汝、我が民を見捨てなば、我、ローマに行きて今一度、十字架に掛からん」。それを聴いたペトロは殉教を覚悟して引き返して行くのです。

この「主よ、何処に…」は「ヨハネによる福音書」13章36節に出て来るペトロの台詞でもあります。「主よ、どこへ行かれるのですか」。英訳では「Lord,where are You going?」と訳されています。

新聞やテレビのニュース番組で、政府主導の「Go To キャンペーン事業」の一連の騒動を見たり聞いたりしながら、しきりに「クォ・ヴァディス」の問いが思い出されて仕方がありませんでした。私たちは、一体どこへ連れて行かれようとしているのでしょうか。

総額260億円(調達費184億円、配送費76億円)を使ってしまったという厚生労働省の「アベノマスク」配布事業と言い、後戻りは出来ないのでしょうか。引き返すことは出来ないのでしょうか。因みに、旧約聖書では「悔い改め」という語は「シューブ」というヘブライ語です。即ち「悪しき道から離れること」「御もとに立ち返ること」を意味します。

牧師 朝日研一朗

【2020年8月の月報より】

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