2015年11月23日

命のパンをください【ヨハネ6:34〜40】

聖句「彼らが、『主よ、そのパンをいつもわたしたちにください』と言うと、イエスは言われた。『わたしが命のパンである。』」(6:34,35)

1.《パンの顔》 パンに顔の付いたキャラクターと言えば、やなせたかしの「アンパンマン」です。最初は「PHP」に掲載された大人向けの童話でした。人間の顔からパンの顔に、8頭身から3頭身へと、子ども向けにキャラ変更して行きますが、貧困と飢えに苦しむ人を助けるために、自分を差し出すというモチーフだけは変わりません。ここには「本当の正義は飢えさせないこと」という、戦中戦後を生きた作者ならではの一貫した信念があります。

2.《パンの耳》 「パンの耳」は、英語では「crust/外皮」「heel/踵」と言います。パンには「耳」だけではなく「生地目」もあります。焼き立てパンから人間の「鼻」が出て来るのは、ゴーゴリの短編小説です。家庭の主婦は「パンの耳」活用レシピを色々と発表していますし、製パン工場でも再利用を宣伝しています。しかし、今も昔も「パンの耳」は、貧困家庭の最後の食糧です。埼玉県在住の母子家庭の母親は、貧困家庭と見られるのを恐れて、ペット店で金魚の餌用の「耳」を買い、100円スープに浸して食べて、給料前を凌ぐと言います。

3.《命のパン》 70〜80年代、読売新聞大阪社会部には、黒田清という硬派ジャーナリストがいて、社会問題に鋭く切り込みました。大阪社会部が発掘した事件の1つが「パンの耳事件」です。1977年、寝屋川市に住む29歳の主婦が、5人の子どもを残して餓死しました。出稼ぎ中の夫の留守に、子どもを飢えさせぬために、自分は水道水とパンの耳で凌いでいたのです。ヘンリ・ナウエンは「キリストの体なるパンは裂かれて食べられるもの」と言いました。食卓を囲み、1つのパンを裂いて分け合う時、その中に命は宿るのです。私たちには、そんな家庭を、教会を、社会を形作って行く使命があるのです。

朝日研一朗牧師

posted by 行人坂教会 at 17:49 | 毎週の講壇から