2017年03月26日

五百年前の白薔薇

「ドイツ聖書協会」から「ルター聖書/Lutherbibel」の「宗教改革五百年記念版」が出ていました。デザインや装丁が素晴らしく、カラー写真や図版も多数掲載されていて、思わず衝動買いをしてしまいました。やはり、何よりも先ず、書籍は美しくなくちゃいけません。触り心地が大切です。

表紙には「ルターの薔薇」として知られる「白薔薇」の紋章が刻印されています。黒いラテン十字架の下に真っ赤なハート、それを受けるのは五瓣の白薔薇、その下地には天上の青い空(ヘヴンリーブルー)、それを金色の輪が囲んでいます。「日本福音ルーテル教会」HPによると、次のように解説されていました。「黒い十字架が付いた赤いハートは、死んで蘇えったキリストへの信仰を/その周りの白薔薇は、この世を超えた喜び、慰め、平和を/空色の地は、天の喜びの始まりを表わし/それらを囲む金色の輪は、永遠にして高貴な救いを与えられていることを象徴しています」と。

この紋章の由来ですが、画家のルカス・クラーナハの紋章からヒントを得て、ルターが自分で考案したと言われています。確かに、クラーナハの絵画には、蝙蝠の翼を持つ蛇が刻まれたルビーが描かれています。また、一五四三年のルターの誕生日に、妻のカタリーナが夫へのプレゼントとして、家の入り口に彫らせたとも言われています。

金色の輪の外に「Des Christen Herz auf Rosen geht,wenn’s mitten Kreuz steht.」という題字が施されているデザインもあります。曰く「薔薇の上に置かれたキリスト教徒の心臓は、十字架の真下にある時に脈打つ」。ルターが唱えた宗教改革のスローガン「信仰のみ、恵みのみ、聖書のみ/Sola Fide,Sola Gratia,Sola Scriptura」が囲んでいるデザインもあります。ルター自身の紋章として「ML」のイニシャル付きの物もあります。因みに、私の買った聖書の表紙では、空色の地の中に「VIVIT」の文字が描かれています。恐らく、ラテン語の「生きている」でしょう。つまり「主は生きて居られる」です。

五瓣の白薔薇も二種類あって、一枚の瓣が真上を向いているバージョンと、二枚の瓣が左右対称に上にあり、二枚の間が真上に成っているバージョンとがあるらしいのです。どうやら、当時、ルターの発行するパンフレットにも、数多くの海賊版が出回ったので、白薔薇の向きを微妙に調整することで、正式な出版物の印としたそうです。

ドイツ語訳聖書を参照する時には、学生時代に「指定」で買わされた(フルドリッヒ・ツヴィングリの)「チューリヒ聖書/Züricher Bibel」を開けることが多かったのですが、これからは、せいぜい「ルター聖書」も活用したいと思います。それにしても、どうして「チューリヒ」を指定されていたのだろうかと、三十年以上も経った今頃に成って思い返します。ツヴィングリだけに一切の装飾を廃した、色気のない聖書でした。たとえ、五百年前に咲いた薔薇(姥桜ならぬ姥薔薇?)でも、薔薇は薔薇、聖書にも「花」が必要です。


【会報「行人坂」No.254 2017年3月発行より】

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