2017年08月27日

ドラマと映画の落穂拾い

1.夏目漱石の妻

録画したままの番組(映画やドラマ)を、何とか夏休みの間に観ようと思ったのですが、やはり、全く消化できませんでした。NHK土曜ドラマ『夏目漱石の妻』(尾野真千子、長谷川博己の出演)は、なぜか最終回だけが未見のまま何ヶ月も放置されていたのですが、先に観た妻が「やはり、オノマチは凄く良い!」と強く勧めたこともあり、いの一番に鑑賞、漸く観終えることが出来ました。

妻のオノマチ好きは、連続テレビ小説の『カーネーション』、土曜ドラマの『足尾から来た女』、映画『きみはいい子』等、その都度、聞かされているので「ああ、やっぱり、そうなのね」…。しかし、私からすれば、どうしても長谷川博己の演技に興味が行くのです。『シン・ゴジラ』も良かったのですが、何と言ってもBSプレミアム版『獄門島』の金田一耕助の情緒不安定ぶりが衝撃的でした。特に、了然和尚役の奥田瑛二との最終バトルでの「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ぁぁ!」という攻撃の台詞には、一緒に見ていた二男までが、思わず仰け反り、「ぎゃあ!」と声を上げた程です。マンガとアニメでお馴染み『ジョジョの奇妙な冒険』のDIO、もしくはジョルノ・ジョヴァーナの口癖なのです。

それはともかく『夏目漱石の妻』ですが、要するに夏目漱石と鏡子の夫妻を演じる二人の演技合戦なので、『獄門島』の時も思ったのですが、こうして互いに火花を散らす役柄だと、役者さん同士は共演しても、きっと仲良くはなれないのだろうなと思いました。妻視点のドラマなので、幾分ロマンチックなエンディングにしてありましたが、夫視点で描いたら、もっと渋い終わり方もあり得たかも知れません。

2.悲しき破壊神

『精霊の守り人U/悲しき破壊神』全9話も、7月末くらいから空いている時間を利用して、少しずつ消化していましたが、目出度く観終えることが出来ました。山本八重を演じたNHK大河ドラマ『八重の桜』以来、綾瀬はるかはアクション(殺陣)が出来る女優として定着した感があります。さすがに第2シーズンともなると、女用心棒バルサの役に全く違和感を抱かせなくなりました。

今回のバルサは、破壊神の依り代にされた少女アスラを守って、ロタ王国の呪術師たちと対決するのですが、ライバルのシハナ役の真木よう子の台詞回しが相変わらず舌足らずで、私は気になって仕方ありませんでした(「それが可愛い」と仰るファンがいることも知っていますが…)。因みに、妻の目撃情報によると、真木よう子は(丁度このドラマの撮影中に当たると思われる時期)目黒アトレのユニクロで下着の大量買いをしていたそうです。さぞかし、アクション演技で汗をかいたのでしょう。

第1シーズンでは、バルサは精霊の卵を宿した新ヨゴ国の王子チャグムを守って戦っていたのですが、今回、そのチャグム(板垣瑞生)は青年に成長していて、サンガル王国の捕虜になったり、海賊に助けられたり、タルシュ帝国の王子に陰謀を持ち掛けられたりと、別の国で冒険をしているのです。こうして全く平行線を進んでいた2つのドラマが、最終の第9話で繋がるのです。チャグムの母親ニノ妃から「用心棒」の依頼を受けたバルサが、絶体絶命のチャグムの所に駈け付ける、この場面では不覚にも泣いてしまいました。「いいかい、私の後ろから離れるんじゃないよ!」「忘れたのかい?私はあんたの用心棒だよ」。ああ、私もこんなカッコいいお姐さんが欲しかった…。

3.桜の花びらが

『君の名は。』で有名な新海誠監督の『秒速5センチメートル』(2007年)も、漸く観ることが出来ました。「一緒に観ようね」と男の約束を交わしていた二男(入院中)からは「裏切り者!」呼ばわりされてしまいました(これが人の世です)。しかも、実際に鑑賞してみて、内容の重さにすっかり打ちのめされてしまいました。敢えて言うならば『雲のむこう、約束の場所』(2004年)に連続する味わいです。

『雲の向こう』においては、思い出の津軽半島の風景があり、その海峡の向こうには北海道の大地が広がっています。それに比べると、東京の街は多少なりとも無機質で薄汚れていますが、それでも美しい。同じように『秒速』においても、東京と地方の風景とが、登場人物たちの「心の距離」として描かれています。

第1話「桜花抄」、両毛線岩舟駅(栃木県)の佇まい、とっぷりと暮れて雪の積もった田畑の遠くに仄かに見える岩船山(東映「スーパー戦隊」もののロケ地)の黒い影、寒くて切なくて、死ぬまで引き摺りそうな予感です。第2話「コスモナウト」、水平線と地平線に丸みを強調して、種子島(鹿児島県)の海と空を表現した風景、これは、私も都井岬の近所に住んでいたので、凄く納得できます。吹っ切れているように見えて、海の青さも空の青さも悲しみの色だったことに、後になって気付かされるような感じ。

第3話「秒速5センチメートル」は、東京で社会人になった主人公たち(貴樹、明里)の物憂い日常が描かれていますが、そのエピローグが、映画冒頭アバンタイトルのプロローグと合わせて「インクルージオ/囲い込み」の反転構造になっています。プロローグと同じく桜の季節で、桜の花びらが風に舞っています。題名の「秒速5センチメートル」とは、新海監督がノルウェーの新聞の取材インタビューで語ったところによると、「桜の花びらが舞い散る速度」なのだそうです。

地方に離れ離れになってしまった時と違い、お互いの物理的距離は狭まったのですが、互いに異なる人生を歩み出してしまった彼らの「心の距離」(秒速5センチメートルで離れて行って13年間)は埋まらず、小田急線の踏切の「すれ違い」として描かれるのでした。

牧師 朝日研一朗

【2017年9月の月報より】

posted by 行人坂教会 at 06:00 | ┣会報巻頭言など