2019年12月29日

師走のスケッチ

1.スローガン

去る12月23日、用事があって妻と二人で西新宿に出向きました。その帰り、JR新宿駅西口駅前交差点に、歩道と言わず、横断歩道と言わず、デパート入口前と言わず、至る所に大勢の若者たちが立っているのを目にしました。皆、黄色の背景に黒文字の大きな看板を支えて無言で立っています。

 「罪から清められた人は幸い。」「神が遣わしたキリストが救世主」「キリストは真の神」「キリストは再び来て、世をさばく。」「キリストは罪人を救う。」「罪のむくいは死」「死後さばきにあう。」「神を畏れ、そのことばに従いなさい。」「キリストは永遠の命を与える。」「神の裁きの日は近い。」…。やはり「罪」「裁き」「死」という脅迫的な文字が目立ちます。

 それら全ての言葉の下には、黒地に白抜きで「聖書」と書いてあります。それを一瞥しただけで「こんなに押し付けがましい事を言う、聖書なんか絶対に読むものか!」と、自然に思わされます。寒空の中(恐らくは)何時間も、重い看板を持って立ち尽くす若者たちの姿を見た上で、黒地の「聖書」の文字を目にすると、それが「ブラック本」だと、暗黙の内に感じさせるのでした。

 未だに、キリスト教会が世間から疑心暗鬼の目で見られるのは、このようなキリスト教系カルトの街宣活動の影響も大きいのです。「ISIL」がテロを起こせば「イスラーム」そのものが危険視されます。元々、社会の中で少数派であると、バッシングの直撃を受けることに成るのです。しかし、このような偏見や無理解に対しては、根気強く誠意をもって、自分たちのあるべき姿を表わして行くより他にありません。

 それと同時に、私たち自身も、上記のようなスローガンを振り回すだけの存在に堕してはいないかと、常に検証して行く必要があります。私たちの聖書の読み方は、カルトの人たちと、どこがどんな風に違うのか、確認して行くことも大切です。そうすることで初めて、聖書の御言葉の中から、現代に活きるメッセージが自ずと浮かび上がって来ると思います。

2.街頭の募金

さて、件(くだん)の立て看板要員とは別に、歩道の片隅には、通行人にパンフを配ったり、アンケートを取ったりする別の要員も待機していました。こちらは、恐らく、立て看板要員よりも地位が高いのでしょう。彼らの脇の、歩道の鉄柵に立てられた幟(のぼり)旗の1つには、あたかも守護神ででもあるかのように、文鮮明(ムン・ソンミョン)と韓鶴子(ハン・ハクジャ)の写真がプリントされています(因みに、2012年に、彼らの「再臨のメシア」文鮮明は肺炎のために死亡しています)。

 鈍感な私は、それを見て漸く「統一協会であったか!」と思いました。相変わらず、団体名は隠したままに「聖書」という文字だけを振り回して街宣しているのです。街宣車も2台出ていて、スピーカーで立て看板と同じような、空疎なスローガンを連呼していました。聞けば、統一協会の信者「食口」(シック:家族や兄弟姉妹)による新宿駅西口でのキャンペーンは、今や師走の名物に成っているそうです。

 その付近では、昔ながらの「救世軍」の「社会鍋」もやっていました。こちらこそは、明治以来の師走の名物でしょう。「だいたんに銀一片を社会鍋」(飯田蛇笏)と俳句の季語にも詠まれています。ご高齢の2名の隊員(兵士)が、募金を入れる人に笑顔で対応されていましたが、以前のように鳴り物(ラッパや太鼓)も無く、ハンドマイクのアピールも歌も無く、とても静かな印象を受けました。

 そう言えば、新宿駅西口では「東日本大震災で被災した、ワンちゃん猫ちゃんを救済する街頭募金」もやっていました。こちらは「NPO法人 青年協議会」です。この街頭募金は目黒駅「アトレ2」の前でも、いつも見るので珍しくはありません。こちらは人目を引くように、愛らしく穏やかな大型犬を何頭か連れて来て、募金集めのアピールにしています。

聞く所によると、募金を呼び掛けている青年たちは、時給1,000円のアルバイトなのだそうです。「青年協議会」という団体の活動目的は、私には今少し腑に落ちません。しかし、それでも「時給1,000円」は決して高くありません。それなりの志(動物愛護の精神?)が無いと出来ません。と言って、統一協会のように、マインドコントロールした青年たちを「奴隷」として使っているのとは違うということです。

3.詐欺の集団

「街頭募金」と言えば、一時期、目黒駅西口で「難病のこどもに愛の手を」という緑色の幟(のぼり)旗を立てて募金活動をしている老人たち(なぜか男女の老人)がいました。「長野県立こども病院」の院内学級を支援するためと銘打っていました。「神奈川県立こども医療センター」を謳っている時もありました。

 長野県立こども病院にしろ、神奈川県立こども医療センターにしろ、そのHPを見ると、募金は集めていますが、「街頭募金は一切行なっていません」とのことです。「東京都内で、こども病院の名前を騙った街頭募金が横行しているとの通報を受けている」とも書かれていました。明らかに集団詐欺グループだったのです。それにしても、あの老人たちは一体、何者だったのでしょうか。

 先の統一協会の場合のように、カルトの青年たちが上からの命令を受けて動員されているのは、如何にもありそうなことですが、老人たちが動員されているというのは、これまでのイメージとは随分違っています。ああ、でも、統一協会のメンバーにも高齢者が増えているのかも知れません。そう言えば、渋谷センター街で「アンケート活動」と称して、不法勧誘をしている、統一協会の勧誘員は中高年の女性たち(統一協会婦人部)でした。

牧師 朝日研一朗

【2020年1月の月報より】

posted by 行人坂教会 at 06:00 | ┣会報巻頭言など