2020年03月28日

黙示録の四騎士

東京新聞の社説コラム「筆洗」(2020.1.31)によると、国連創設75年の年頭メッセージにおいて、アントニオ・グテーレス事務総長が世界を襲う災厄を「黙示録の四騎士」に譬える発言をしたそうです。彼が事務総長に就任した翌年にも、ほぼ同様の主旨の演説を行なっています。@戦争と紛争、核兵器の脅威、A気候変動、B不平等の拡大、人権侵害、C国粋主義と排外主義、この4つの災厄を挙げて、解決への協力を訴えていました。今回の演説を私は確認していませんが、Cがデジタル技術の悪用に変わっていたようです。

Cの変更は、ベストセラー本『the four/GAFA〜四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)を想起させるものでした。著者のスコット・ギャロウェイは、米NY大学経営大学院の教授です。「GAFA/ガーファ」とは、コンピュータやソフトウェアを駆使して世界経済を支配する四大企業、検索エンジンの「Google/グーグル」、デジタルデバイスの「Apple/アップル」、SNSの「Facebook/フェイスブック」、ネットショップの「Amazon/アマゾン」の頭文字です。

「GAFA/ガーファ」は、世界中にネットワークを張り巡らした多国籍企業であると同時に、膨大な個人情報を集積し、「ビッグデータ」として活用しています。つまり、サイバー空間を支配することにより、利用者の消費傾向や動向を左右し、更には、ライフスタイルから思想信条にまで影響を与えることが出来るのです。結果的には、私たちが気付かない内に、社会の在り方まで変化させられているのです。

この「黙示録の四騎士」の出典は、スペインの文豪、ブラスコ・イバニェスが1916年に発表して、世界的なベストセラーと成った小説(Los Cuatro Jinetes del Apocalipsis)です。アルゼンチンの大地主の娘たちがドイツ人、フランス人と結婚して、孫も生まれます。しかし、孫たちが青年期を迎えた頃に、第一次世界大戦が勃発、出征した孫たち(従兄弟たち)は前線で敵味方に分かれて殺し合い、死んで行くという物語です。

ハリウッドで映画化されて(1921年)、ルドルフ・ヴァレンティノがタンゴを踊る場面ばかりに注目が集まりました。この映画にも、終末を思わせる「戦雲」の幻として「黙示録の四騎士」が登場します。白い馬、赤い馬、黒い馬、青白い馬に乗った者たちが次々に現われて、世界に災厄をもたらすのです。それぞれが「征服」「戦争」「飢饉」「死」を象徴しています(「ヨハネの黙示録」6章1〜8節)。時代状況の変化によって「飢饉」が「疾病」と入れ替えられることもあります。

ロープシン(ボリス・サヴィンコフ)の小説『蒼ざめた馬』『漆黒の馬』も、アガサ・クリスティの推理小説『蒼ざめた馬』も、クリント・イーストウッドの映画『ペイルライダー』も、勿論「ガンダム」のモビルスーツも「黙示録」からの引用です。

因みに、日本では「四騎士」と言われますが、聖書本文には「騎士」等という表現は一切ありません。「カテーメノス/馬に乗っている者」、即ち「騎手」です。


【会報「行人坂」No.259 2020年3月発行より】

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