2011年10月24日

スズメのいのち

今年の六月頃だったでしょうか、二男が、下校の際、近所で飛べなくなっている子スズメを発見しました。二男にせがまれるまま、家に連れて帰って来てしまいました。巣立ちしたばかりの子スズメでした。生まれつきなのか、それとも、巣から出て怪我をしたのか、片方の羽根が傷付いて、広がらなくなっていました。しかも、足も折れているようで、スズメ特有のホッピングが出来ません。

人間が野生のスズメを飼うことは、大変に難しいことであると承知していましたので、子どもには「二、三日で死ぬだろう。何も期待するな」と宣告していました。それでも、家族で話し合って、取り敢えず名前を付けることにしました。最初は、私の提案で「ジャック」としました。言うまでもなく、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で、ジョニー・デップ演じる海賊「ジャック・スパロー/スズメのジャック」からの借用です。ところが、二男の再提案によって「ジャッピー」と改名されました。

段ボール箱の中にボロ切れを敷いて「巣」を作ったのですが、問題は飲食です。それでも、水は何とかなりました。小さなコップに水を入れて、頭を突っ込むと、ジャッピーは嘴をパクパク開けていました。幸い教会の中庭からは、活きの良いミミズが幾らでも取れます。食糧の確保は簡単なのですが、本人が少しも食べてくれないのです。

丁度その頃、クレア・キップスの『ある小さなスズメの記録』(文藝春秋社)を読み終えたばかりでしたので、訳者の梨木香歩さんに電話をして相談しました。彼女は、我が家のジャッピーが、キップスの飼っていたスズメ「クラレンス」と全く同じ境遇であることを知って、大いに驚いていました。

「強制給餌しかないわねぇ」というのが結論でした。片手で嘴を強制的に押し開いて、ピンセットか爪楊枝を使って、ミミズの切れ端(刺し身)を□の中に挿入するのです。「最初は抵抗すると思うけども、この人たちはぼくに悪い事をしようとしているのでないんだと、必ず分かって貰えるはず」と言っていました。

ところが、私は愚かにも、彼女の有り難い助言に素直に従うことが出来ませんでした。ジャッピーは片羽根と足以外は元気なのですから、新鮮なミミズを「巣」の中に入れてさえ置けば、自分で食べると判断してしまったのです。今思えば、何としても彼の命を長らえさせようという、必死の思いが足りなかったのかも知れません。

三日目の朝、段ボールの「巣」の中で、冷たくなっているジャッピーを発見しました。「食べたはず」と私が思い込んでいた餌のミミズは、段ボールの隙間から干物に成って見つかりました。そこで初めて、彼が何も食べていなくて餓死したことを知って愕然としたのです。命の問題においては、時に「強制」が必要な事態があるのです。

スズメは、聖書の神さまが大好きな小鳥です。大変に申し訳ないことをしました。

【会報「行人坂」No.243 2011年10月23日発行より】

posted by 行人坂教会 at 19:56 | ┣会報巻頭言など