2012年06月01日

たとえ塔は崩れ

1.東京タワー

数日前に「東京スカイツリー」が開業しました。怪獣映画の華やかなりし頃ならば、早速、映画の中で「破壊されなくてはならぬ名所」です。

因みに、東京タワーを最初に破壊した怪獣を御存知でしょうか。怪獣映画ファンの間では常識ですが、『モスラ』(1961年)です。モスラの幼虫が孵化のために繭を作り、東京タワーが折れ曲がるのです。テレビの怪獣では、『ウルトラQ』第16話「ガラモンの逆襲」(1966年)が記憶に鮮やかです。そして、何と言っても忘れ難いのが『ガメラ/大怪獣空中決戦』(1995年)、折れた東京タワーの上に、ギャオスが営巣して卵を温める場面です。

よく「ゴジラが東京タワーを破壊した」と主張する人がいますが、それは間違いです。第1作目の『ゴジラ』(1954年)が、ラジオ中継中の鉄塔を破壊する場面なのです。この時、ゴジラは、品川国鉄操車場、銀座和光ビルの時計台、松坂屋、国会議事堂、上野動物園、浅草、勝鬨橋を破壊して回ります(まるで東京名所巡りです)。しかし、不思議なことに皇居と東京タワーは破壊しません。どうして「ゴジラは、皇居を踏めないか」については、既に赤坂憲雄(日本精神史)による、『ゴジラ』と三島由紀夫『英霊の聲』との比較研究がありますので、ご参照ください。問題は東京タワーです。

2.ゴジラの夢

その後の「ゴジラ映画」でも、東京タワーは破壊され続けています。例えば、『三大怪獣/地球最大の決戦』(1964年)ではキングギドラが、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ/東京SOS』(2003年)ではモスラが、『ゴジラ/FINAL WARS』(2004年)ではモンスターX(カイザーギドラ)が東京タワーを破壊します。

少し趣旨が異なりますが、『キングコングの逆襲』(1967年)では、女性を捕らえて逃げるメカニコングを、キングコングが東京タワーに追い詰めて、タワーの鉄骨に掴まりながら、2匹が格闘を繰り広げます。結局、メカニコングが落下して壊れるのですが…。

しかし、不思議なことに、ゴジラ自身が直接、東京タワーを破壊することはありませんでした。漸く、ゴジラが東京タワーを破壊するのは、怪獣映画ではない、『ALWAYS/続・三丁目の夕日』(2007年)冒頭の、「鈴木オート」社長(堤真一)の夢の場面です。この映画冒頭の怪獣の夢は、『ALWAYS/三丁目の夕日’64』(2012年)では、「鈴木オート」社長がガメラ(のような怪獣)に変身するという展開に成ります。

さて、この『ALWAYS』シリーズの怪獣の夢、山崎貴監督の趣味なのでしょう。しかし、案外、夢オチの原典は『男はつらいよ/寅次郎真実一路』(1984年)冒頭、寅さんの夢に現われる「ギララ」にあるのでは無いでしょうか。『宇宙大怪獣ギララ』(1967年)は、松竹が製作した唯一の怪獣映画です。

3.タワー破壊

別に、ゴジラはタワーを破壊しないという、固い信念を持っている訳ではありません。東京タワー以外のタワーを幾つも破壊しています。『モスラ対ゴジラ』(1964年)では名古屋テレビ塔を、『ゴジラVSビオランテ』(1989年)では大阪ツインタワーを、『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)では札幌テレビ塔と東京都庁を、『ゴジラVSモスラ』(1992年)では「みなとみらい21」を、『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)では京都タワーを、『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)では福岡タワーを破壊しています。「タワー」と言いながらも、純粋な塔ではなく、ビルディングの場合もありますが、以上の記録を見ると、特にバブル期に製作された「平成ゴジラ」シリーズでは、各都市のタワーが破壊されるのが恒例行事と化していることが分かります。

ゴジラ以外の怪獣たちもタワーを破壊するのが大好きです。『三大怪獣/地球最大の決戦』では、キングギドラが横浜マリンタワーを、『ゴジラ/FINAL WARS』では、アンギラスが上海タワーを、ジラ(アメリカ・ゴジラ)がシドニー・タワーを破壊します。

兵庫県出身者としては、神戸のポートタワーが忘れられているようで心配でした。でも、思い出しましたよ。『大怪獣決闘/ガメラ対バルゴン』(1966年)では冷凍怪獣バルゴンが、テレビの『ウルトラセブン』第14〜15話「ウルトラ警備隊西へ」前後編(1967年)ではキングジョーが破壊してくれていました。

古い話で恐縮ですが、1959年の英国映画『怪獣ゴルゴ』(Gorgo)では、ゴルゴがロンドンの時計塔「ビッグベン」を破壊する場面があります。この怪獣の名前と造形は明らかにゴジラのパクリですが、「人間に捕らえられた子供を取り返しに来た怪獣」というモチーフは、後々、日活唯一の怪獣映画『大巨獣ガッパ』(1967年)から、スピルバーグの『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)に至るまで再利用されることになります。

4.われらの塔

タワーに限らず、ランドマークと成るような高層建築は、そもそも破壊され、崩れ落ちることが予感される物なのでは無いでしょうか。今更「創世記」11章の「バベルの塔」を引用する必要もありません。私たちは、現実に「9.11」の世界貿易センタービルの崩壊を見てしまったのですから…。ディノ・デ・ラウレンティスの製作した、1976年版『キングコング』(King Kong)は、エンパイア・ステート・ビルではなく、世界貿易センターがクライマックスですが、今改めて見直すと、不思議な感慨で胸が一杯になります。

そんなことを考えながら、「讃美歌21」の400番を思い出しました。「たとえ塔は崩れ/瓦礫となるとも/主の教会から/鐘はなお響く」…という歌詞のデンマークの讃美歌です。

牧師 朝日研一朗   朝日です。

【2012年6月の月報より】

posted by 行人坂教会 at 08:59 | ┣会報巻頭言など