2012年08月01日

フランチェスコ映画

1.フランコ・ゼフィレッリ

「ホサナ広場」が主催して、礼拝堂で映画の上映会をすることになりました。昨年、購入した液晶プロジェクターとスクリーンを活用していただく良い機会です。そこで何を上映するかということで、色々な映画の題名が挙げられましたが、結局『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972年)に決まったようです。

『ブラザー・サン シスター・ムーン』(Brother Sun,Sister Moon)は英語の題名です。イタリアの原題は「Fratello Sole,Sorella Luna」と言います。

監督のフランコ・ゼフィレッリは、『じゃじゃ馬ならし』(1967年)、『ロミオとジュリエット』(1968年)、『ナザレのイエス』(1977年)、『チャンプ』(1979年)、『エンドレス・ラブ』(1981年)が日本では知られています。本国ではヴィスコンティの弟子筋として、オペラ演出家の知名度の方が高く、80年代に入ると、『トラヴィアータ〜1985・椿姫〜』(1982年)、『オテロ』(1987年)、『トスカニーニ〜愛と情熱の日々〜』(1988年)等のオペラ映画、音楽映画を手懸けるようになりました。ゼフィレッリ作品で、私が最後に劇場に観に行ったのは、シャルロット・ゲインズブール主演の『ジェイン・エア』(1996年)でした。

2.リリアーナ・カヴァーニ

要するに、アッシジのフランチェスコの伝記映画です。「聖フランシスコ」と言うことは、アメリカの「サンフランシスコ/桑港」の街の由来でもあります。フランチェスコはカトリックの聖人の中でも最も人気が高く、何度も映画化されています。

「ネオ・リアリスモ」の巨匠、ロベルト・ロッセリーニ監督(イングリッド・バーグマンと不倫したくせに、実は敬虔なカトリック信者)が、1950年に『神の道化師、フランチェスコ』を撮っています。1961年には、『カサブランカ』のマイケル・カーティス監督が『剣と十字架』というハリウッド製の剣戟映画に仕立てています。

しかし、「フランチェスコ映画」の製作に3回も関わったのは、リリアーナ・カヴァーニ監督を措いて他にありません。彼女の場合は「フランチェスコに取り憑かれている」「フランチェスコに恋焦がれている」と言っても過言ではありません。『愛の嵐』、『ルー・サロメ/善悪の彼岸』、『愛の謝肉祭』、『卍/ベルリン・アフェア』(谷崎潤一郎原作、高樹澪主演!)等の愛欲ドロドロ映画で知られる女性監督です。しかるに、彼女の監督デビュー作(29歳)は意外にも『アッシジのフランチェスコ』(1966年)なのです。

この作品、日本では公開されていませんが、「キネマ旬報」の資料には「聖人フランチェスコを史上最初のヒッピーとして捉えたので、轟々たる非難を浴びた」と書いてあります。そして、23年後には、当時人気のあったアメリカの俳優ミッキー・ロークを主演に招いて、再び『フランチェスコ』(1989年)に挑んでいるのです。実は、このカヴァーニが『ブラザー・サン シスター・ムーン』でも、4名の脚本家の中に名を連ねているのです。

やはり「史上最初のヒッピー」という辺りの、斬新な解釈が認められての登用なのでしょう。『ブラザー・サン…』で、フランチェスコを演じるグラハム・フォークナーが何もかも脱ぎ捨てて、スッポンポンになる美しい場面なども、当時流行したストリーキングやヌーディスト等に通じるのかも知れません。スコットランドのフォークシンガー、ドノヴァンが主題歌を担当しているのも、ヒッピー世代への目配せです。但し、ドノヴァンと映画製作会社との間に、権利関係の係争が生じて、ドノヴァンの歌はレコードに入りませんでした。私の持っているサントラにも、カティア・ラニエッリ(音楽を担当したリズ・オルトラーニの奥さん)が(小林幸子のように)熱唱するイタリア語の歌しか入っていません。

3.カンティコ・デル・ソレ

日本で上映されたフィルムも、日本で発売されたVHS、LD、DVD等も、押しなべて上映時間は121分です。それが「インターナショナル・バージョン」です。しかし、イタリア完全版は135分あるのだそうです。

中学生の頃に観て以来ですから、かなり記憶も怪しくなって来ているのですが、クララを演じたジュディ・バウカーには、瑞々しい印象を受けました。彼女は他には、テレビの『黒馬物語』(NHKで放送していた)のヴィッキー役、『タイタンの戦い』のアンドロメダ王女役くらいしか見た覚えがありません。その他の出演者では、執政官役のアドルフォ・チェリ(『007/サンダーボール作戦』のラルゴ)くらいでしょうか。

クライマックスで、教皇インノケンティウス3世役で登場するのが英国の名優、アレック・ギネスです。『戦場にかける橋』、『アラビアのロレンス』、『ローマ帝国の滅亡』、『ドクトル・ジバゴ』、『さらばベルリンの灯』、『クロムウェル』等の大作映画の顔です(個人的には『マダムと泥棒』をお勧めします)。しかし、この教皇役、ローレンス・オリヴィエが病気で降板したための代役だったのです。そう言えば、『スター・ウォーズ』のオビワン・ケノービ役も、三船敏郎がオファーを蹴った後の代役でした。

そろそろ、題名の「ブラザー・サン」と「シスター・ムーン」を説明します。聖フランチェスコの祈りとして知られる「太陽讃歌」(Cantico del Sole)の一節、「私たちの兄弟である太陽の故に、主を誉めたたえましょう」「私たちの姉妹である月の故に、…主を誉めたたえましょう」です。「讃美歌21」223番(旧「讃美歌」75番)「造られたものは」は、フランチェスコの「太陽讃歌」を翻案した歌詞です。しかし、残念ながら、汎神論ギリギリの自然賛美は日本語の歌詞に反映されていません。その徹底した自然賛美の故に、アッシジのフランチェスコは現在、カトリックでは「環境保護の聖人」とされ、仏教徒をはじめ自然や環境を大切にする多くの異教徒から尊敬されているのですが…。

牧師 朝日研一朗

【2012年8月の月報より】

posted by 行人坂教会 at 12:27 | ┣会報巻頭言など