2012年12月12日

幽径耽読 Book Illuminationその4

  • 「HUNTER×HUNTER/ハンター×ハンター」第13巻「参戦」(冨樫義博作、集英社)
    私が一番好きなキャラはレオリオです。そのレオリオが放出系(?)の念能力で、ジンに一撃を喰らわす場面が愉快。ネテロ会長亡き後の選挙戦から、ゾルディック家のお家騒動へ話がシフトしつつあります。いつものことだけど、面白くなれば良いです。
  • 「六本指のゴルトベルク」(青柳いづみこ著、中公文庫)
    娘をピアニスト、ヴァイオリニストにしようと懸命な母親たちがいる。つくづく「駱駝が針の穴を通る」ような虚しい夢なのだと思う。それも、児童虐待に近いという意味では悪夢。しかし、その悪夢の中から、ミステリーやホラーが生まれるのだから、満更、捨てたものではありません。
  • 「戦闘技術の歴史2/中世編」(マシュー・ベネット他著、浅野明監修、野下祥子訳、創元社)
    ボヘミアのフス派が単なる宗教集団ではなく、「車輪の壁」という戦術兵器を開発した戦闘集団だということが分かりました。軍師ヤン・ジシュカ、偉い。コンスタンティノープルを攻め落としたオスマン帝国のスルタン、メフメト2世がキリスト教徒の女奴隷の息子だというのは知っていました。しかし、彼のために攻城用大砲(重量18トン)を作ったのも、ウルバンという名前のハンガリー人「背教者」だったのです。
  • 「邪悪な虫」(エイミー・スチュワート著、山形浩生監訳、盛岡桜訳、朝日出版)
    昔、厭魅の呪術で蠱毒を作ろうとしたことがあります。「矢毒」コーナーに紹介してあるアメリカ先住民ヤヴァパイ族の毒の製法が傑作。「鹿の肝臓にタランチュラ、ガラガラヘビを詰めて地中に埋め、その上で火を焚く。それから掘り出して腐らせた物をペースト状にする」のだそうです。まさに蠱毒です。
  • 「アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚」(クラーク・アシュトン・スミス著、大瀧啓裕訳、創元推理文庫)
    ラブクラフトとの最大の違いは、魅力的な女性の存在です。魔女、女吸血鬼、恋人、犠牲者…。「イルゥルニュ城の巨像」は、ゴーレム、大魔神、庵野秀明の巨神兵、エヴァの系列です。「分裂症の創造主」は、旧約聖書の真面目な読者が必ず突き当たるテーマを、上手にドラマ化しています。
  • 「新世紀エヴァンゲリオン」第13巻(貞本義行画、GAINAX作、角川書店)
    遂に「生命の樹/セフィロト」が青空を背景に具現化。お母さん、唯の台詞から、セカンド・インパクト後は、季節が夏限定であったことが漸く分かりました。確かに「夏」は黙示録や終末のキーワードですものね(マルコによる福音書13章28節以下)。
  • 「アド・アストラ/スキピオとハンニバル」第3巻(カガノミハチ作、集英社)
    独裁者ファビウスの苦しい消耗戦が描かれています。いよいよ、次の4巻では、カンナエの戦いに突入する訳ですが、ファビウスの最大の政敵、ウァロの登場場面が僅か過ぎて(説明不足でしょう)、少し心配です。
  • 「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」(町山智浩著、文春文庫)
    私が「アメリカ・キリスト教史」を教わった森孝一先生は、2004年当時、「民主党がグァンタナモ収容所の告発を徹底していれば、ブッシュ再選を防ぐことが出来たのに」と言っていました。しかし、民主党政権にとっても、グァンタナモは必要なのです。
  • 「エストニア紀行/森の苔、庭の木漏れ日、海の葦」(梨木香歩著、新潮社)
    テレビの紀行番組には、こんなに地味な素材はありません。この紀行文を読みながら、私は「地味」ということをズッと考えていました。ここに紹介されている、バルト海沿岸に広がる葦原の風景のように、静かにゆっくりとした営みを、東京のド真ん中にあっても、続けることは出来ないものでしょうか。
  • 「黄色い部屋の謎」(ガストン・ルルー著、宮崎嶺雄訳、創元推理文庫)
    うちの教会員に、翻訳者の娘さんがいます。「父は一行訳すのに一晩を費やしたこともありました」と言っておられました。本書は旧版が76版、新版が4版、計80版を重ねた古典中の古典です。古典なので読み進むのに難渋する章もあるにはありますが、それだけに最後の釣る瓶落としのような展開は胸がすきます。
  • 「影が行く/ホラーSF傑作選」(フィリップ・K・ディック他著、中村融編訳、創元SF文庫)
    異星の先住民の地下墓地に入った調査隊が出遭う恐怖を描いた「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」が最高。フェイスハガーの如き生物、大きな骨壷の列の中を逃げ回る情景などは『エイリアン』です。「睡の樹」に登場する、周辺環境ごと変化させて定着しようとするエイリアンも凄い。
posted by 行人坂教会 at 16:09 | 牧師の書斎から