礼拝説教:「命を得させてくださる方」

*カメラのマイク機材トラブルのため、この日の礼拝説教は動画がなくご迷惑をおかけします。

目次

はじめに ― 祈りと命への感謝

キリスト教の習慣の中で、私がとても好きなのは「食前の祈り」です。大学時代、キリスト教の寮に住んでいたときのこと。高校までは信仰に無縁だった私にとって、食事の前に祈るというのはとても新鮮な体験でした。

寮では毎晩、みんなで祈ってから食事をいただきます。中でも印象に残っている祈りがあります。

「神様、食事を作ってくれた方に感謝します。食べられる健康を感謝します。そして、神様が与えてくださった命に感謝します。」

この祈りは、今日私たちが共に読む詩篇30篇のメッセージ――「命を与えてくださる神への感謝」と深くつながっています。

この詩篇は、ダビデが大きな病を経験し、死の淵から救い出された感謝の歌です。彼は高ぶりと過信から悔い改め、神の憐れみによって「命を得た」ことを、深く証ししています。


Ⅰ.主は引き上げてくださる方(1–2節)

「主よ、あなたをあがめます。あなたは敵を喜ばせることなく、わたしを引き上げてくださいました。」(30:2)

ここで「引き上げる」と訳されたヘブライ語「ダーラー」は、井戸から水をくみ上げる動作を意味します。まるで井戸の底にいるような絶望の中から、神が私たちを救い出してくださるというイメージです。

私たちの人生にも「底に落ちた」と感じる時があります。病、失業、孤独、人間関係の破綻…。でも、そんな中で私たちの叫びを神は確かに聞いておられます。

ある教会員、星野京子さんはご自宅で転倒し、苦しいリハビリを経て、再び教会に来られるようになりました。その姿に、私は大きな励ましを受けました。


Ⅱ.主は癒してくださる方(3–4節)

「わたしの神、主よ、叫び求めるわたしをあなたは癒してくださいました。」(30:3)

「癒す」はヘブライ語で「ラーファー」。これは体だけでなく、心や魂の癒しを意味する言葉です。この賛美は、単なる病気回復の喜びではなく、深い苦しみを経た者にしか歌えない信仰の賛歌です。

日曜日、川添さんが転倒し入院されました。月曜日にお見舞いに伺ったところ、痛みの中でも神への賛美を口にされていました。「主を喜ぶことは私たちの力」――その言葉に、私は信仰の深さを教えられました。


Ⅲ.命を与えてくださる方(5–6節)

「主はわたしの魂を陰府から引き上げ、墓穴に下ることを免れさせ、わたしに命を得させてくださいました。」(30:4)

ここでの「陰府(よみ)」は死の世界、絶望の深みです。ダビデはそこから命を与えられ、新たな人生を歩み始めたと語ります。まさに「命を得させてくださる方」なのです。

健康も、日々の暮らしも、すべては神の憐れみによる贈り物です。最近訪問した教会員も「健康とは本当にありがたいことですね」と言っていました。


Ⅳ.涙の夜にも朝は来る(5–6節)

「泣きながら夜を過ごす人にも、喜びの歌と共に朝を迎えさせてくださる。」(30:6)

人生には、涙の夜があります。病や別れ、孤独に押しつぶされそうになるとき。でも、神はその夜の向こうに「朝」を備えてくださっています。希望の朝、喜びの朝です。


Ⅴ.人は高ぶり、神はへりくだりを求められる(7–8節)

「平穏なときには申しました、『わたしはとこしえに揺らぐことがない』と。」(30:7)

人は順調なとき、自分の力を信じてしまいます。でも、神が御顔を隠された瞬間、私たちは恐れに包まれます。ダビデはそう告白しました。

信仰とは、自分の力に頼るのではなく、主に拠り頼むことです。


結び ― 嘆きを踊りに変えられる神

「あなたはわたしの嘆きを踊りに変え、粗布を脱がせ、喜びを帯としてくださいました。」(30:12)

この詩篇の最後は、深い絶望から救い出された者の賛美です。主によって癒され、命を与えられた者が、もう沈黙せず、主をとこしえに賛美すると歌います。

「わたしが来たのは、羊に命を得させ、豊かに得させるためです。」(ヨハネ10:10)

キリストは、まことに「命を得させてくださる方」です。


結論

本日私たちは詩篇30篇を通して、以下の3つの神の御業を見てきました。

  1. 神は私たちを引き上げてくださる方
  2. 神は私たちを癒してくださる方
  3. 神は私たちに命を与えてくださる方

昇天日を迎え、来週はペンテコステ。イエス・キリストは復活後、弟子たちに聖霊を送ると約束されました。そして今も、私たちを神の命で満たしてくださいます。

その命を受けた者は、この世界に愛と命を届ける「小さな川」となり、やがて神の命の川へと合流していくのです。

罪と死の力に支配されていた私たちが、今こうして生かされている――それは主の恵みです。

この恵みに感謝し、へりくだって、主に信頼して歩んでいきましょう。

アーメン

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